映画のエキストラの仕事をする

14 years ago

前回はこちらから。

トロントでは映画の撮影が頻繁に行われていて、街を歩いていると撮影にでくわすことがよくある。

その日トロントのオフィス街、Bayストリートのある一角は、アメリカのPhilidelphiaの街角になった。

道にはフィラデルフィア警察のパトカーが並び、エキストラの車のナンバープレートはフィラデルフィアのプレートに付け替えられ、通りの名もフィラデルフィアのストリートに変えられた。

土曜日、私とJ次郎は早起きしてスーツを着込み、朝6時に家を出て、仕事へと向かった。

これから2日間、私たちはBackground(バックグラウンド)と呼ばれるのだ。

まず登録を済ませ、持ってきた衣装を見せる。

この日はupscale(高所得者層)のオフィスワーカーに扮するので、J次郎はネクタイを締め、スーツを着込み、すっかりビジネスマン。IT業界に身をおいているJ次郎は普段オフィスへ行くときはビジネスカジュアル。ネクタイを締めるどころかスーツを着ることはほぼ皆無なのだが、この際にとインドでオーダーメードしたスーツが、意外なところで役にたった。私も久々にスーツ姿。靴もそれなりのきちんとした靴を履く。

エージェントからの指示には、メークも済ませ、指示された服装を着て仕事場へ赴くことと、予備の服装のセットを必ず持参することを告げられていた。

服装チェックの係りの女性は、予備のセットにと用意したやはりインドでオーダーメードしたカシミヤのジャケットをみると、あら素敵なジャケットねえ、肌触りもいいわ、といたく気に入った様子。そのスーツもいいけれど、他の人たちと同じような色なので、このジャケットを着てちょうだい、といわれ結局J次郎は全て着替えた。

私は持ってきた別のスーツを見せると、あら、これもいいスーツじゃない、でもあなたは今きているのでいいわ、ということで着替えなくてもよいことなった。

他のひとをみていると、旅行に行くようなスーツケースに服を詰め込んできている人たちが多く、あれこれいいながら服装チェックを受けていた。

初日はオフィスビルのロビーでのシーン。

エキストラは、立ち位置を割り振られていく。J次郎は2、3人で話しながらロビーを歩いていく係り。

私はなぜかひとりだけ呼ばれ、ここに立ち、俳優がビルの中に入ってきたらその後ろを通過してね、と指示を受けた。

ところが、俳優が入ってくると、2メートルくらい後を、ぴっちりとカメラが追っていて、なかなかタイミングが難しい。俳優は曲がるのだが私はまっすぐなので、俳優とカメラの間を横切ることになるのだが、タイミングを間違えるとカメラにぶつかってしまう。

そのうち、立っていていきなり歩き出すと不自然だから、かがんで、ソファーに座っている別のエキストラと話してから歩きだすように指示があったが、それだと俳優が入ってくるのが見えず、さらに難しい。

それでもなんとかこなしたが、それもなんだか不自然に見えるらしく、あーでもないこーでもないとAD同士が相談し、さらに指示が変わりソファーに向かってかがむ角度がかわったりした。

正直、その他大勢のなかでいるかいないか紛れているだけだと思っていたのでかなり面食らってしまった。

ちなみに私が話していたのは、子役の赤ちゃんの本当のお母さん。ベビーカーには本物の赤ちゃんを乗せていた。この赤ちゃんは双子で、ひとりがぐずつき始めるとすぐにもうひとりが連れてこられた。ちなみに赤ちゃんは4時間までしか働くことができないそうで、もう一組別の双子が用意されていた。

この日はあと2シーン撮影があり、私とJ次郎は全てに呼ばれて、7時に終わったときにはくたくたになった。途中12時からランチがあったが、時間が短く、あわただしく過ぎていき、ろくに休めたものではなかった。

続きはこちらから。

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